カースル・クーム
Castle Combe

カースル・クームはウィルトシャーの谷合にある小さな村です。バースから12マイルほど北東にあります。コッツウォルズと呼ばれる地域としては最南端にあると言ってよいでしょう。→地図を見る
カースル・クームは、イギリスでももっとも絵のような美しい村と呼ばれることの多い村です。その名の通り、古くはローマ時代に住居や城があったということです。村にはバイ・ブルック(By Brook)という小川が流れています。村の中央には、14世紀のマーケット・クロス(Market Cross)があり、そばに水を汲み出すポンプがあります。往時は、ここに馬を止め水をやったりしたのでしょう。この場所を中心にコッツウォルズ特有のライム・ストーンの家並みが道に沿って続きます。村の教会、セント・アンドリュース教会は12世紀までさかのぼる教会です。
15世紀にかけては、他のコッツウォルズの村と同様に、羊毛業(職工業)で栄えました。’Castlecombe’というブランド名の、赤と白からなる衣服が50くらいのコテージで製造されたということです。また、スクロープ家(The Scrope Family)がリチャード2世の時代に領主(Lords of the manor)としてこの地に入り、約500年ここに住みました。現在、このマナー・ハウスは「マナー・ハウス・ホテル」というホテルになっています。
左端、朝のマーケット・クロス、カースル・クームのメイン・ストリート
カースル・クームの名は、レックス・ハリソンとアンソニー・ニューリーが主演した1966年の映画「ドリトル先生」(Dr. Doolittle)で一躍有名になりました。映画では、なんと漁港としてこの村が使われたのです。ロケのために村のテレビのアンテナは取り払われ、バイ・ブルックに桟橋のセットが作られたりしました。村の人々はエキストラとして参加したそうです。
下3枚マナー・ハウス・ホテル
私たちがカースル・クームを訪れたのは5月のことで、バースやブリストルを見物した後、夕方近くに訪れたのでした。カースル・クームのB&Bに宿泊しようと、宿の予約はしてありませんでした。ブリストルを見た後、A420を東に走りましたが、夕暮れはどんどん濃くなっていくのに、なかなかカースル・クームの名は現れません。曲がるべき道を行き過ぎてしまったようで、道を逆戻りしました。ようやく曲がるべき道はここだろうと判断し、A420から北に走りましたが、道はさらに緑深い細い道となり、村を感じさせるものはいっこうにありません。本当にこの道でよいのか、暗くなる前に到着できるのかと心細くなっていきました。こんな不安と焦りの時間は、実際よりもとても長く感じるものです。
ようやく村らしきものが前方の谷間に見えた時には安堵の気持ちがわきました。村に着くと、そこは古めかしい中世の雰囲気、確かにカースル・クームです。やっとたどり着いた桃源郷だという感じがしました。
空は晴れていましたが、もう夕暮れで、人は誰も歩いていません。マーケット・クロスのところにB&Bを見つけ、泊めてもらおうとしましたが、鍵がかかっており人がいない様子で、再び困惑しました。仕方がないので、村の裏手にあるマナー・ハウスの方まで歩きましたが、そこで、農夫の小柄なおじいさんに出会いました。「あそこのB&Bには人がいないようですけど」、と尋ねたら、顔見知りのようで、「どこかへちょっと行ったんだろう、わしが話をしてあげるよ」と、親切に私たちを案内してくれました。
とても気のいいおじいさんで、日本人である私たちに拘泥せず、気取りもせず、気さくに自分から話を続けてくれました。家路につきながらたまたま私たちと歩いているといった風情でした。夕暮れは濃く、どこの家から出たものか、煙がたなびいています。おじいさんと話しながら、「この村は、イギリスに産業革命や大英帝国があったことも知らないのだろうなあ」、という感興がわきおこりました。そこには、多くの日本人がイギリスにイメージする、かつて歴史をリードした大先進国を感じさせるものは何もなかったからです。
ほどなく、B&Bの小柄なおばさんが現れ、おじいさんが私たちを紹介してくれました。ダイニングは、曲がった木枠が剥き出しになっているのが面白く、宿泊した部屋は、窓からマーケット・クロスが見える小奇麗な部屋でした。私たちは、イギリスに来て以来、B&Bに泊まるのは初めてであり、とてもイギリスらしさを感じて喜びました。夕食は近くのパブでフィッシュ&チップをとったと思います。
翌朝、おばさんは、この近辺の観光地をいくつか教えてくれました。私たちは、そのうち、ボーウッド・ハウス(Bowood House)を訪れました。
宿泊した The Gates Tea Shop
Market Place, Castle Combe, Wiltshire, SN14 7HT
Telephone 0249-782111
村は中世のままの静かな雰囲気をたたえていますが、翌朝、村を出て少し北に行くと、村を訪れる人のための駐車場がありました。さらには、Castle Combe Circuitという自動車レースのサーキットが近くにあったりするようでした。地図で見ると高速道路のM4はこの村の北で、さほど遠くないところにあります。村の北側から入るような道を来れば、心細い思いはしなかったのかもしれません。
私たちにとってはイギリスで初めて訪れた中世の村、B&Bを初めて味わった村として思い出深い村です。
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